地球環境に配慮した漁業
わが国は、水産資源の世界最大の消費国として、領海外漁業に対する国際ルールづくりの主要提案国として、生物多様性の保持による生態系の調和を目的とする漁獲規制強化や漁法の制限などに積極的にかかわっていくことが必要である。
WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の2004年の発表資料によると、日本は世界中で取れるマグロの、実に3分の1を消費する世界一のマグロ消費大国である。自国でも多くの漁獲を行なっているほか、台湾や地中海沿岸の国々、またオーストラリアなどから大量にマグロを輸入している。それに加え日本食ブームの海外への広がりで、日本人や世界中の日本食ファンが世界中の海のマグロを食い尽くす勢いだ。食習慣とは言え、消費者には需要・供給原則に見合った消費行動を促すための輸入制限を含む量的制限措置、日本的食習慣に合わせた代替措置の提案などについての理解を得て、自給率の向上を目指すことを国民的目標とすべきである。
環境保全型の沿岸漁業として主流となるのは、天然資源を枯渇させない栽培漁業と循環型養殖漁業である。
わが国では、栽培漁業は1980年代から全国的な取り組みとなり、卵から稚魚までを育てる「種つくり」と、魚礁や増殖場を造る「場づくり」に分かれ、稚魚をしっかり育てて自然の海に放し、生育環境を整備し大きくなった魚を獲る漁業である。
また、循環型養殖漁業は、「水槽や生けすなどを利用して卵や稚魚から、魚が大きくなるまで育てる。」だけの従来の養殖から一歩進んだ中・大型魚種を対象にした養殖漁業である。ここでは、「卵を自家採取してふ化させ、」「餌にする小魚類は栽培漁業で賄う。」ことで、完全な循環型養殖を可能にした。
この両方式の漁業で超大型回遊魚である黒マグロを含むほとんどの魚種が漁獲されるようになってきた。これらの漁法は、地球環境や生態系の保全に寄与するばかりか、遠洋漁業のように外国との間で天然資源の獲得競争をする必要がない。このように、領海内や沿岸漁業においても、狩猟的手段による魚業から海洋牧場など酪農的な手法による漁業への転換を目指す「栽培型海洋牧場」の構築こそ、消費国日本のとるべき道である。
農・林業との連携で食糧自給に目途をつける(再生可能エネルギー基地との併用)
狭い国土で食糧の自給自足を目指すには、農業による海洋利用は必然である。生鮮食品や栄養補助食品、畜産用飼料の生産、バイオマス原料生産などのための海洋農園利用である。荒廃した森林の二酸化酸素浄化の役割を補完し大気や海の浄化にも貢献できる。
牛、羊その他の反芻動物は、二酸化炭素(CO2)よりも温室効果がおよそ20倍高いメタンを多く排出すると言われている。一匹の牛が一年間に排出する温室効果ガスの量は、およそ1.5トン、ニュージーランドでは、温室効果ガス排出量全体の半分が、農業からの排出が占め、そのほとんどは牛と羊に起因すると言われている。その牛と羊による排出のほとんどは、ゲップによるものだ。
ジェームズクック大学(James Cook University)のトニー・パーカー(Tony Parker)氏によると、世界で排出されているメタンガスの20パーセントが家畜のウシから発生しており、その主な原因は飼料にあるという。世界のウシの少なくとも50%が途上国で飼育されているが、その大半は熱帯地域にあり冬になると牧草の質が低下し、ウシから発生するメタンガスが増える傾向がある。研究チームによると藻などの海草は陸上の草よりも繊維質が少ないうえにでんぷんが多いので牧草よりはるかに消化がよい。このため海草をウシの飼料にするとメタンガスの放出を抑制できるという。
この研究成果は、農業と漁業との連携の他、耕地の少ないわが国にとって、大いなる可能性を示唆するものだ。従来、食糧用農産物の生産さえ自給は困難と考えられ、ましてや畜産用飼料の原材料を国内で生産することなど思いもよらず、海外依存は必然だった。しかし、この研究成果を見れば、畜産用飼料のみならず農業生産と水産業の連携で食糧自給の道が開けることは明らかだ。更に、食生活の見直しなど、医学的な裏付けによる社会教育面での意識改革も伴えば、食糧自給達成もそう遠くはないかも知れない。
更に、それらの洋上施設は、風力発電や潮力・波力発電、人工光合成技術を利用した再生可能エネルギー利用との連携施設としても積極的に建設を推し進めるべきである。
<TPPはアメリカの流儀「パワーゲーム」>
<競争から共生への方向転換こそが、再生への唯一の道>
<日本経済の再生>
<産業用原材料、エネルギー資源、および食糧、自給の道を開け>
<強い農業は地方・地域の活性化で>
<地球環境に配慮した漁業>
<地方の活性化と産業構造改革>
<雇用対策>
<生活コストの削減で新規需要創出>
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