競争から共生への方向転換こそが、再生への唯一の道
アベノミクスで日本が壊されてしまう前に
アベノミクスを受けて、日銀の黒田総裁は2%のインフレターゲットを設け、異次元金融緩和を打ち出した。円安を誘導し輸出産業を活気付け、同時に年金資金の株式運用率を高め、株高誘導で景気の高揚感を盛り上げる作戦だった。これは、リーマンショック以降、景気低迷が続いていたアメリカのFRBバーナンキ議長が行ったQE政策の焼き直しだ。
アメリカのQE政策は、市場へのドル供給を増やし、その資金がより金利の高い新興国に流れ、BRICS諸国の目覚ましい経済成長を支え、世界経済をけん引し米経済の立て直しに一役買った事になる。
しかし、2009年6月の不況終了宣言から2年を経ても、実際に好転したのは企業収益と輸出量のみで、農業および非農業部門の雇用はほとんど増えず、住宅価格と銀行の貸出量はマイナスのままだった。結局、アメリカの『景気回復』の実態は上場多国籍企業の収益好転と株価の上昇だけだった。
現在のアベノミクスと全く同じである。しかし、ドルと円では市場への影響力は大違いであり、日銀が銀行から国債を買い入れ銀行に円資金を供給しても、新規貸出が増えるわけではなく、日銀の当座預金口座に積み増されるだけである。円安誘導すら機能せず、アメリカやユーロ圏、中国の経済状況の変化で一喜一憂する事になる。年金の運用で株高を誘導しても日本株がある程度上昇すると、外国人投資家が大きく売り込み株価は下落する。民主政権から安倍政権に代わり、株価は2倍になったが、それに貢献した年金資金は外国人投資家のカモにされ、結果として、アベノミクスが年金資金を目減りさせてしまった。
このように、マネーの運用で経済の動向をコントロールするようなやり方では、金融市場は活性化しても実体経済の好転には全く貢献せず、第一の矢で効果がなければ第二の矢でとばかりに、実体経済を活性化しようとして公共投資を増やせば、財政赤字がさらに嵩み、次世代につけを回し格差は益々広がる一方で収拾がつかなくなる。
こんな見当違いの政策しかできない者たちに、更に見当外れの第三の矢など放たれたら日本は本当に壊れてしまう。経済中心主義のマネタリズムや自由競争主義に終止符を打ち、「競争から共生への方向転換」について考えてみるべき時が来たように思える。それこそが、「再生への唯一の道」ではなかろうか?
ものづくりの原点回帰と輸出立国の幻想は捨て去ろう!
過去において、日本はエネルギーや工業用原材料などの資源が少なく、それらを海外に求めるとなるとそれ相応の外貨が必要となるために、外貨を稼ぐための加工貿易を中心とする産業構造を確立し、目覚ましい経済発展を遂げ、世界第二の経済大国としての地位を獲得した。(輸出立国)
その成功よって確立された日本の自信が、「ものづくり」であろう。ものづくりは最先端の技術や熟練した職工の経験によって確立された技能によって創作された結晶であることは紛れもない事実である。
しかし、日本が誇る新幹線を例にとると、中国に輸出された新幹線は、分解され、その技術の細部まで研究し尽くされ、そっくり模倣され、中国の確立された技術となってしまった。その結果、海外への新幹線売り込み合戦ではあっさりと中国に負かされてしまう例が後を絶たない。買う側にとっては政治的な力学とその対価が最優先で、安全性や運行の正確性など、日本が誇るシステムの信頼性など考慮の対象にもならない。。
この路線を貫こうとすれば、常に量産化・大量消費の競争社会に身を置き、競争に打ち勝っての成功しかあり得ない。地球温暖化や資源獲得競争が激化し、既に地球は悲鳴を上げ、気候変動や地殻変動などによる災害が頻発している。
コップ21の枠組みでは、先進国も途上国も温室効果ガスの削減目標をそれぞれが定め、その目標を達成することが求められている。「ものづくり」をもっと地球にやさしく夢のあるものにしていかなければならないことは世界の常識だ。
最早、従来通りの「ものづくり」や「輸出立国」の幻想は捨て去る時だ。ニーズに対し、是非にと望まれるものだけをつくり、価格競争になってしまうようなものは得意な国や企業に任せ、地方の活性化で内需中心の経済構造を構築すべきである。ビジネスの規模を海外にも広げたければ、海外に進出し現地の人を雇用し現地生産で稼げば良い。
「国内にあって為替変動のリスク解消を国や日銀の政策に求めることは止めよう。」
資源獲得や市場獲得に熾烈な競争を控え、地球やさしい経済構造を!
最先端技術をふんだんに盛り込んだ商品開発、ニーズを先取りしメディアを巻き込んだトレンドづくり、政府が自国企業のセールスマンとなるような外交姿勢、大国によるアジアやアフリカでの新市場獲得競争、そのような手法が人類の明るい未来を導くことになるのだろうか?
限られた資源を次から次へと使い尽くす、経済成長しか頭にない政治家や経済人は、日本の高齢化と人口減少(労働人口)に大きな危惧を抱き、外国人労働者の導入まで模索している。そんなことが本当に必要なのだろうか?
限られた国土の中で、人口が減れば一人当たりの国土面積は拡大する。何か、悲観すべき材料になるのだろうか?
そのような現在の動きは、人類の滅亡までの時間を縮めているのではなかろうか?
生活者の視点で考えると、食品分野では生産者の顔が見え、新鮮さと安全・安心が担保され流通コストも抑えられる地産地消が積極的に取り入れられ始めた。また「日本国内における年間の食品廃棄量は、食料消費全体の2割にあたる約1,800万トン」と政府公報は伝えている。この無駄を極力減らそうとすれば、食糧自給率も向上し、輸送などの無駄なエネルギー消費も減少する
国際関係においても食品のみならずあらゆる分野において、地産地消は技術的にも十分に可能な時代となった。エネルギーを例にとると、再生可能エネルギー利用でも太陽光発電、小水力発電、風力発電、地熱発電、バイオエネルギー発電、潮力発電、波力発電など立地条件に応じベストな組み合わせを行なえば十分な電力を確保できるはずである。長期的視野に立てば、ランニングコスト面では、海外から原油や天然ガスの調達コストや為替変動リスクに加え、輸入するために投下される政治的な費用まで加算すると十分に採算が取れる可能性がある。
工業用原材料にしても、スクラップ&ビルドによる資源の再利用や耐久消費財の長寿命化、木造大規模建築物の推進など、森林資源、海洋資源を最大限に利用しようとすれば、工業用原材料の自給率も向上させられる。
現在、私たちには根本的な意識転換が求められている。
年々ひどくなる異常気象、既にタイム・リミットを過ぎているのかも知れない。
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