年金制度改革案
現状の年金制度を見ると国民年金の未納率が40%を超えている。未加入者が減少する一方、未納者は増加傾向にある。公的年金全体でみると、公的年金全体でみると未加入+未納者の割合は5.1%に過ぎないが、老齢基礎年金分に対して2分の1が税で賄われていることを考えれば、リストラによる失業や派遣切りなどやむを得ない状況で未納に陥り無年金になってしまう不条理は、制度改革が必要であることを示している。
この現実を踏まえると、所得再分配の観点から、基礎年金の税方式化はあるべき姿であると考えざるを得ない。この場合、移行期間において、既加入者の保険料負担分をどのように受給額に反映するかが問題で、制度設計の難しさがある。これを行うに当たっては、未納問題ばかりでなく、第三号の被保険者問題、共済年金の2階建て部分の税負担(厚生年金の事業主負担相当分)や職域加算、保険料率など、年金制度全体の不公平部分の整理撤廃による是正が必要である。これら公平を欠いたままの制度改革では国民の信頼は得られない。
新しい制度として、税を財源とする最低生活保障目的の老齢基礎年金を設け、唯一の国家管掌年金とし、無年金者問題も解消する。また、目標年度を定め、「最低賃金 > 老齢基礎年金支給額 > 生活保護給付額」 の原則を確立する。
現在の年金制度から新制度への移行期間中の暫定制度として、従来の国民年金相当分を新制度に置き換え、厚生年金や共済年金加入者及び受給者用に、年金の2階建て部分を完全に分離し、老齢基礎年金とは別に、個人の保険料積立額に応じて老齢基礎年金額に加算して支給する積立老齢年金とする。両年金がそれぞれの年金原資を確定した後に、積立老齢年金の運営を国から第三者機関に移行し国債で運用する。
新制度に切り替えると同時に、従来の老齢基礎年金分の保険料納入は不要になる。また、新たに積立老齢年金への加入はできず、同様の年金を希望する場合は、個人の自由選択により民間の保険等を利用することになる。
年金の受給開始年令を65歳とし、障害年金、遺族年金を廃止し、社会福祉で補完する
《老齢基礎年金》:国家管掌の最低生活保障年金
- 富の再分配機能に適した税を財源とし、老後の最低の生活を保障する制度とする。
- 受給対象者の範囲を所得が民間勤労者平均又は国が定める限度額以内の者で、65歳以上となった者とする。
- 満額支給額は、当面現行制度を維持し、所得が民間勤労者平均の2分の1未満の者は満額給付、所得がそれをを超え限度額に至るまでの者は漸次低減される。また、移行期間中は、従来の国民年金未加入や未納がある場合、支給額を満額から2分の1の範囲で減額して支給する。移行期間は最大20年と定め、財政努力により短縮できる。
- 現行の国民年金積立額及び個人ごとの積立実績は新制度に引き継がれ、老齢基礎年金財源及び支給額算出データに組み込む。
- 移行時には、厚生年金および共済年金加入者の保険料積立総額から、加入者及び婚姻期間を考慮した被扶養配偶者二人分の老齢基礎年金保険料積立相当分を新制度の老齢基礎年金原資相当分として老齢基礎年金財源及び支給額算出データに組み込む。
- 経済情勢の変化等により、年金支給額が最低生活保障に似合わないと判断された場合、物価変動分を補完する。
《積立老齢年金》:移行期間中の暫定制度(新規加入はできない)
- 積立老齢年金は移行期間中の暫定制度とし、新規に加入することは出来ない。
- 個人の保険料積立額に応じて、老齢基礎年金額に加算して支給する制度とする。
- 新年金制度では積立老齢年金と同様の民間の2階建て部分の年金への加入は個人の自由選択となるため、厚生年金及び共済年金の事業主負担相当分は特別利益供与(現制度では共済年金に約2兆円超の税負担)となり、公平性を欠くことから、これを廃止する。また、加給年金も同様に廃止する。
加入者それぞれの積立額確定にあたり、事業主負担分や保険料率については一切考慮せず、個人の積立額の累積額で確定する。 - 移行開始時に、被用者年金各法により支払った保険料積立総額から老齢基礎年金保険料積立相当分を差引いた残りを、積立老齢年金の積立額として確定し、運営を国から第三者機関に移行し国債で運用する。
老齢基礎年金原資及び積立老齢年金積立額の確定には、加入者に被扶養配偶者(3号被保険者)がある場合、被扶養期間に応じて積立額は2分されそれぞれに積み立てられた分として積立額及び加入期間を算出し、また、3号被保険者が2号被保険者となった期間があれば、積立額は2号被保険者本人分と既に被扶養期間の積立額と合算される。 - 積立加算老齢年金の原資のうち、政府が制度上先行支給により失った部分の財源の一部(遺失原資の5分の1又は100兆円を限度に)は、暫定制度存続期間中、毎年一定額を政府が補完し、老齢基礎年金と合算した給付金の上限を年額にして民間給与所得平均の半分程度まで下げるなど、原資に見合った給付方式を定めることで制度を維持する。
《年金への課税》
- 老齢基礎年金及び積立老齢年金の収入分について国民平均所得を考慮して所得控除を設け、所得が民間勤労者平均の二分の一未満の者は満額、所得が民間勤労者平均以上の者は所得控除なしとして、その間を漸次的に控除額を低減して全所得について総合課税する。
<社会保障を支える制度の問題、年金制度の問題、無理のない制度の構築>
<厚生・共済年金は憲法違反>
<専業主婦も被害者である>
<遺失原資>
<年金制度改革案>
<生活保護制度改革 「現金支給から現物支給へ」>
<医療保険制度の問題>
<医療保険制度改革案>
<雇用対策>
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