TPPはアメリカの流儀「パワーゲーム」
反TPP論者として注目の京都大学大学院准教授・中野剛志氏は、「もともとTPPはブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドの4か国による小さな連合にすぎませんでした。オバマ大統領の関与表明で米国の世界経済戦略に組み込まれたわけですが、このことは、2008年に起こったリーマン・ショックと大きな関係があります。今でも米国の失業率は9%を超えていて、ある意味出口なしの“飢餓状態”です。米国にとってのTPPは、アジアへの輸出を増やして米国国内の雇用を創出することが狙いです。オバマ大統領は昨年の横浜APECで来日した際にもアジアで輸出を増やす意欲を表明し、正直に『国外に10億ドル輸出するたびに国内に5000人の職が維持される』と述べています。ところが、TPP交渉参加国はいずれも小国で輸出先として期待できない。そこで、大きな国内市場を持つ日本を狙い撃ちにしようとしているわけです。」 と言われています。
言ってみれば、アメリカが提唱するTPPやFTAは、「良い品物をそれを必要とする市場に届ける日本的な商売の世界」ではなく、国家間、グローバル企業間の「パワーゲーム」でしかない。グローバル企業に操られた政府が、外交圧力を最大限に生かし、相手に少々のエサを与え、狙った市場の規制撤廃を迫る形であらゆるところに触手をのばしていく。それがTPPやFTAの実態「弱肉強食」なのだ。
問題なのは、関税や規制を設ける分野を予め明記して、それ以外の分野は全て規制を受けないと言う「ネガティブリスト」方式が多くの分野で採用されるため、絶対に譲れない部分はこのネガティブリストに明記されなけれなならない。要求と言う形で交渉のテーブルに乗らないからと言って、それらが対象外になると言うことではない。
また、これらの経済協定に必ず盛り込まれる「ISD条項」や「ラチェット条項」が問題である。ISD条項は、企業に不都合な規制(殆どが国民の安全や健康、福祉、環境保全等の目的)に対し、相手国を訴え、規制の撤廃や賠償金を求める権利を認めるもので、ラチェット条項は一度決めたことから規制を強化するような変更を認めないとするものである。
これは、国民より外国企業の利益が優先され、憲法で約束されている国民の主権を侵害するものであり、民主主義の根幹を揺るがすものである。この様なことにならないためには予め、「安全保障(国家主権の保全)」策を講じておかなければならない。それは、時の政権がいかに無能な政権であろうと、外交交渉などで、パワーゲームに負けて国民に危害が及ぶことがないようにするための国家防衛機能である。
『TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る』 ことを表明
日本のTPP参加の意向は、野田政権によって実質的に世界に向けて表明された。野田首相は、国内向けには『TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る』 ことを表明したと言う。しかし、米政府は、「(日米首脳会談で首相は)『全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる』と述べた。」と発表した。首脳会談で、双方の認識の差がこれほど大きく隔たることはあり得ない。米側が意図的に流したものなのか、日本側が内外での顔を使い分けているのか、相手国側の発表に抗議しないとなれば、実際の発言がどうであったのかは想像に難くない。これでは『二枚舌』と言われても弁明の余地はない。このことは、本人が外交交渉に全く自信がないことを物語るものである。
現在日米双方から互いの国に対する要望や思惑、また、現在協議中の国々においてどのような内容が問題として挙がっているかは、以下から読み取れる。
TPPにおける対日要求・日本側関心事項・参加国間通商問題
TPPにおける問題点
少なくとも、EU・アメリカの財政危機やアメリカ格差社会の歪を例に引くまでもなく、アメリカン・スタンダードは最早破綻に向かって突き進んでいる。我が国は国際社会において、独自の視点からそれを修正し、共生のためのルール創りをリードして行かなければならない。
日本の底力を、「ものづくり」 に矮小化する訳にはいかない。この日本には、古から培われてきた日本独特の哲学や価値観、『外国文化を受け入れる寛容さ、お天道様に顔向けできない、お互い様、我慢、譲り合い、助けあい、ほどほど・腹八分目、もったいないなど、社会性や自制の知恵』 がある。また、近代社会における列強との熾烈な戦いと敗戦、復興、高度成長、バブル崩壊、失われた20年、世界に先駆けた高齢化社会など様々な経験を踏まえた超先進国である。
現在において足りないのは、『日本および日本人のアイデンティティを確立し、共生の道を探る。』 という視点である。その視点に立てば、現在進められているTPPをアメリカン・スタンダードによるものではなく、ジャパン・スタンダードに置き換える努力が必要なのである。
TPP反対派の人々の怒りは、政府や産業界、知識人など推進派の人々がそのような視点を持たず、グローバリズムに乗り遅れる事ばかりを強調している点に向けられているのだと思われる。
TPP参加に向けての国民無視の暴走を止める(東京大学 鈴木宣弘教授)
<TPPはアメリカの流儀「パワーゲーム」>
<競争から共生への方向転換こそが、再生への唯一の道>
<日本経済の再生>
<産業用原材料、エネルギー資源、および食糧、自給の道を開け>
<強い農業は地方・地域の活性化で>
<地球環境に配慮した漁業>
<地方の活性化と産業構造改革>
<雇用対策>
<生活コストの削減で新規需要創出>
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