ミスマッチの無駄な雇用対策
超高齢化社会の到来で就労可能人口の減少が危惧される一方で、雇用氷河期と言われる状況が続いている。行政の若年者支援対策の中心は、若年者の就業意識や労働能力を高め、就業へと結びつけることに置かれている。しかし、就業意識の向上は個と社会との関わり方の問題であって、むしろ義務教育課程における課題である。
国の雇用支援策と言えば、地域ごとに職業能力開発促進センターを設置し、求職者や在職者を対象にして、職業能力開発、職業訓練、キャリア形成支援、ニート等の若者の職業的自立支援など、職業訓練や資格取得によるスキルアップという「押し付け型のプログラム」に参加させ、費用の援助等を行う方法が主流であった。しかし、職種によって求められるスキルは異なり、予め用意された汎用スキルアップ講座などへの参加は、必ずしも有効な方法とは言えず、時間と金の無駄遣いとなる可能性も大である。
求職者にとって、どのような職種への就職が可能なのかも分からない状態では、職業訓練や資格取得は失業期間を長期化させるだけでなく、求職者に幻想を抱かせ、職業訓練や資格取得そのものを目的化してしまう危険性さえある。
また、これらの支援は、資格取得のための専門校などとの政治的癒着を生み、独立行政法人の雇用・能力開発機構や高齢・障害・求職者雇用支援機構など官僚の天下り先を増やすだけのことである。
発想の転換が求められる雇用対策
現在のような実効の上がらない支援対策に対し、新雇用支援対策では、公的支援の内容は同じでも、求職者側ではなく、受け入れ側企業に対して行われる仕組みとする。受け入れ側企業は、就労希望者の就労意欲と就業職種に対する興味や理解度を見極めて採用し、スキルアップは入社後に企業の責任で行われるようにする。
こちらの方が従来の方法に比べ遥かに実効性が高く、同額の予算投入を考えた場合、より手厚い支援となる筈だ。雇用支援のための独立行政法人の運営や地方ごとの箱物(公共施設)の建設と施設運営費用の負担など、求職者とは直接的な関係がない部分にかける費用が莫大なものとなる。
それは、国のみならず、地方自治体の負担についても同様である。これらの予算を、求職者が職を得た後に、求職者及び雇用企業双方に恩恵がある方法で使われるようにすれば、より雇用促進につながる筈である。
雇用対策には産業構造の底上げが必要
雇用対策には産業構造の底上げが必要である。3K労働(「きつい」「汚い」「危険」)などと呼ばれ、若年労働者が敬遠する建設・土木、ゴミ処理などの肉体労働や看護師、介護士など過酷な労働環境のために離職者が絶えず、慢性的な労働力不足に陥っている業種については、賃金や労働環境の見直しと同時に派遣業の対象から外し、労働者の地位向上で就労意欲の高揚を図り、賃金の適正化で長期的な安定雇用につなげることが必要である。
また、下請け中小企業への大企業の立場を利用したコスト削減圧力により、原料値上がりや消費税を価格転嫁出来ないことなどによる収益力の低下を、輸出産業の消費税の戻し分を下請け企業に還元するなどの調整政策や企業系列を離れた中小下請け企業間の連携とワークシェアリングで、大企業との関係を対等にするなどの方法も考えられる。
同時に、一般企業においてもサービス残業の禁止や賃金の残業割増率のアップ、ワークシェアリングの導入など、受け入れ側の意識改革を促し、法制度として「同一労働同一賃金」を設け、正規社員と非正規社員の時間当たりの賃金格差是正を図る事が必要だ。
新雇用対策
経済再生のための雇用支援策の最大の柱は、以下の四つである。
- 「同一労働同一賃金」による非正規労働者の不利を解消
- 男女および正規・非正規雇用による諸手当・賞与・社会保険の事業主負担を含む労働対価の差別撤廃と契約の明文化、雇用期間の下限制限などを定めた期間契約雇用制度を制定し、現在の非正規労働者の不利を解消する。
- 労働環境の整備
- 嫌われる仕事の代名詞 「危険(きけん)・汚い(きたない)・きつい」 である3K産業、これらの仕事が敬遠されるのは単に 「3K」 というだけでなく、社会にとって必要かつ重要な職業であるにも拘らず、もっと楽な事務職などと比較してもそれに見合った待遇などが保証されておらず、仕事に誇りを持てないことに起因する。労働者の身体的かつ精神的な負担も考慮した勤務体制や賃金体系を整え、応分負担について国民的な理解を深めることが必要である。
- 最低賃金の上方修正
- 単身生活保護世帯に対する給付額が地域によっては勤労者の最低賃金を上回るケースがある。このような現状を放置する限り、国民の勤労意欲の喪失を招き、生活保護費などの社会保障費の増大につながることは明らかである。
わが国の制度では、何故か最低賃金と生活保護受給額が連動している。現状のような「買い手市場」の雇用環境においては、パートなどの雇用者は、当然のように最低賃金を提示して求人を行う。生活保護からの自立を容易にするためにも、最低賃金と生活保護受給額の連動を止め、新規の雇用創出と最低賃金の上方修正が必要である。
- 単身生活保護世帯に対する給付額が地域によっては勤労者の最低賃金を上回るケースがある。このような現状を放置する限り、国民の勤労意欲の喪失を招き、生活保護費などの社会保障費の増大につながることは明らかである。
- 雇用支援は雇用受け売れ側へ(支援付きトライアル雇用)
- 企業が面接等で人物や適性を判断し、雇用後に企業の要求によって受ける職業能力開発や資格取得のための訓練や教育を企業に対して支援する制度とする。これは、現在のトライアル雇用制度の拡充版の支援付きトライアル雇用とも言えよう。
従来は求職側が求人側の要求に応えられるよう事前にスキルアップする方法をとって来た訳だが、マッチングという観点からは、とても求人側の要求に堪えられるものではなく、求人側にしてみれば、経験者の再雇用ならともかく、始めから教育し直さなければならない場合が殆どであり、時間と費用の無駄であった。これは大学教育や高度の専門校にしても同様のことが言える。
- 企業が面接等で人物や適性を判断し、雇用後に企業の要求によって受ける職業能力開発や資格取得のための訓練や教育を企業に対して支援する制度とする。これは、現在のトライアル雇用制度の拡充版の支援付きトライアル雇用とも言えよう。
- 少子化対策への取り組みが有能な人材の確保と労働力不足の解消に
- 男性による子育て意識の共有や優秀な人材を確保するために企業内保育園や学校などの空き教室を利用した同一地域内の企業連合保育園などの子育て支援施設の保有運営に対する政策支援で、企業側に意識改革を迫り、希望すれば待機期間なく即時入園できるようにすることで、子育てのために職場を離れたり、再就職の機会を失うなどの問題がなくなるよう環境整備する。この場合、子ども手当などの現金支給は行わないものとする。
結果的に女性の社会進出意欲を向上させ、生産年齢人口(15歳〜65歳)に占める専業主婦の比率を減少させ、子供を作ることに躊躇していた夫婦や未婚女性の出産を増やし人口減少にも歯止めをかけるための施策である。
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