政府の役割と国民負担(私たちは国に何を求め、何をするか)
米国のリンカーン大統領は『人民の、人民による、人民のための政治。』と言った。また、ケネディ大統領は『国があなた達に何をしてくれるのかではなく、あなた達が国のために何が出来るかである。』と言った。今私達は、国とは、地方自治体とは何なのかを基本に立ち返って考えてみる時なのではないだろうか。
異常な借金財政から一刻も早く脱却するためには、無駄な公共事業の大幅削減は勿論のこと、国の役割、地方自治体の役割の大幅見直しがなされなければならない。そればかりか、私達が頼みとしてきた教育、医療、福祉、年金、その他の行政サービスについても考え直す必要がある。何故なら、私達がより多くを望めば国や地方の役割も増し、税金は減るどころか増税に繋がるのである。
国民負担の増大は、利に群がる政治家や官僚、利権者達にフリーハンドを与え、経済を硬直化させるだけでなく、国民の勤労意欲や向上心をも奪い、国や社会の衰退を速めるだけのことである。
私達が自助努力で出来ることは公(国や地方自治体)に頼らず、生活における最小の『自由、平等、安全、安心』のみを公に頼めば良いのではなかろうか。そうすれば、自と公の役割とするところが見え、公が担うべき公共事業の範囲や行政システムの規模、予算の規模が決まってくるのである。そして、この程度の負担なら十分払えるという範囲を決めて公の役割とすることではないだろうか。
『公の役割と課税原則』 は以下の三つに単純化出来る
-
- 第一は、不確実性社会にあって、『自由、平等、安全、安心を保障し、私達が生存や子育てに不安を抱くことなく自由に社会参加できる環境造り』 を目的とし、格差社会の是正など、富の再分配機能を持たせる。
【直接税:所得税、法人税、相続税、贈与税、社会保険税など】 ⇒ 国税
【直接税:住民税、法人住民税など】 ⇒ 地方税 - 人や法人は存在することによって社会や環境に何らかの影響を与える。公の役割および税の使途の第二は、『私たちが社会や環境に与える影響を最小限に止めること』 とする。
【直接税:、環境税、資産税など】 ⇒ 地方税 - 第三は私たちの生活における便益享受や権利取得、その他の経済活動に対して課され、その使途を、『行政サービス、社会基盤の整備、社会教育の充実、学術・科学・文化振興、国際協力・支援活動などに資する』 ものとする。
【間接税:付加価値税、特定物品税】 ⇒ 地方税
【間接税:関税、印紙税、登録免許税など】 ⇒ 国税
- 第一は、不確実性社会にあって、『自由、平等、安全、安心を保障し、私達が生存や子育てに不安を抱くことなく自由に社会参加できる環境造り』 を目的とし、格差社会の是正など、富の再分配機能を持たせる。
このように考えると徴税方法も使途と連動して考えられるため、帳尻合わせの安易な『直接税・間接税』の論議にはならない。
日本型消費税の全ての物品に一律に課税するやり方は、低所得者層への負担が重く、格差の更なる拡大につながるばかりでなく、税を価格に転嫁できない下請け中小企業の経営を圧迫することになる。
消費税を導入するのであれば衣食住や教育、医療関連消費財は無税とした上で、ヨーロッパ型の付加価値税とし、インボイス制度を用い、課税、非課税、適用税率の範囲等をきめ細かく管理する方法を模索することが必要である。インボイス制度がない現在は、輸出の際の戻し税が競争で価格に転嫁できなかった中小企業に戻されず、輸出大企業の益税になるばかりである。こんな 『やり得、やられ損』 を許しておいて良いのだろうか?
国内における直間比率の論議は、欧米の例を引いて、教育や医療サービスの充実などには触れず税率の高さだけを比較し、日本はまだまだ増税の余地があることを強調する。これは国民生活を顧みず、安易な徴税方法を誘導するための財務官僚の謀略としか思えない。
現政権は国民の生活が第一と言いながら政権に就きながら、官僚の手先となって、国民無視の政治を行っている。私たちが本気になれば、政治は変えられるものであり、変えなければならない。