財政制度
二十一世紀の高齢化社会に向けた公平負担原則を構築するために、直接税と目的税の使途を明確にし、それぞれの税率と課税方法・課税範囲を国民合意を基に見直す。また、所得税累進課税の課税段階と最高税率について、幅広い論議を展開する必要がある。
国に求められる役割は国民の基本的な権利としての生活や経済活動などにおける自由、平等、安全、安心の保障、不確実性に対する不安の保障、生活や経済行動において社会や環境に与える影響を最小限に止めること、および行政サービスや社会基盤の整備、社会教育の充実、学術・科学・文化振興、国際協力支援等、わが国の生活基盤を整え、アイデンティティーを確立すことである。当然のことながら、財政もこれらの目的を達成するために支出される費用に充当されるものでなければならない。
しかし、わが国は産業構造そのものが財政支出によって恩恵を受ける利権者集団の比率が非常に高い公共事業依存体質である。これは明治以来今日まで変わることのない政財界の癒着構造体質であり、あの悲惨な侵略戦争を招いたのもその結果である。
この産業構造を変えなければ国の財政構造も変えることは出来ない。現政府のようにこのままの体質を維持しながら当面の景気回復を優先し、本質的見直しを先送りするのでは、国家予算は国に求められる役割が増える度に雪だるま式に増大し、国民の自由と活力を奪いひいては国際競争力の衰退を招くことになる。
財政改革は手始めに公共事業の削減と産業構造改革を推進し、企業に体質の改善を促さなければならない。日本企業の信用を回復し、以前のような活気を取り戻すためには、護送船団的行政を排除し、企業自身も悪評高い日本的企業体質を改め、公共投資や保護に頼らなくとも十分にやっていける強くてクリーンな経営体質・営業体質にしていかなくてはならない。自由競争社会で生き残るためには横並び姿勢を改め、経営者ばかりでなく労働界も共同して改革のスタートにつかなければならない。そして、独創的かつ良質で安い製品やサービスを世に送りだすことである。
改正憲法では国の役割と適正な使途に対する国民合意、公平負担原則、国民負担の上限の設定、参入業者に対する制限の禁止、災害などの緊急時の迅速な対応措置などを明確にすべきである。
国の役割と適正な使途に対する国民合意、公平負担原則
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- 国家財政は以下の使途に充当され、国会の議決に基づき内閣がその処理にあたる。内閣はその処理にあたり使途内容を明確にして、公益性や合理性・必然性・事業の効率性、役割分担主体としての是非について、国民の理解を得た上で適正な運用を図る。
- 国が国民の基本的な権利としての生活や経済活動などにおける自由、平等、安全、安心の保障と、不確実性に対する不安を保障するために支出する費用に充当する。
- 生活や経済行動において社会や環境に与える影響を最小限にするために支出される費用に充当する。
- 行政サービスや社会基盤の整備、社会教育の充実、学術・科学・文化振興、国際協力支援等、国の生活基盤の整備と日本国および日本国民のアイデンティティーを確立するために支出される費用に充当する。
- 公金その他の公の財産を国の事業に供する場合、発注対象を国内外を問わず特定の企業および企業集団等に制限してはならない。
- 公金その他の公の財産を、国が指定する人道援助又は地球環境保護などの用に供する場合、普遍的活動を行う非政府組織への信託を除き、直営又は目的の達成を確認できる企業若しくは団体を通じて行わなければならない。
- 国は国民の国及び地方の財政負担について、国民の自由意志による活動や切磋琢磨による幸福の追求に支障のない範囲を定め、それ以上の負担を課してはならない。
- 新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには、国民の公平負担原則に基づき、法律または法律に定める条件によらなければならない。
- 国費を支出し、又は国が債務を負担するには国会の議決に基づかなければならない。
- 首相は毎年度の予算を作成し、国会に提出してその審議を受け、議決に基づかなければならない。
- 外交、防衛、経済、災害などにおける危機対応のため、予算の補正を必要とする場合、首相は国会にその内容を提出してその審議を受け、議決に基づかなければならない。
- 予見し難い予算不足に充てるため国会の議決に基づき予備費を設け、首相の責任においてこれを支出することができる。又、首相は災害などの緊急時において、人命救助や被害の拡散防止に充てるために予算の使途を変更できる。その場合首相は事後にその支出内容を明らかにして、国会の承認を得なければならない。
- 皇室の財産は国に属する。全ての皇室の費用は予算に計上して、国会に提出してその審議を受け、議決に基づかなければならない。
- 国家財政は以下の使途に充当され、国会の議決に基づき内閣がその処理にあたる。内閣はその処理にあたり使途内容を明確にして、公益性や合理性・必然性・事業の効率性、役割分担主体としての是非について、国民の理解を得た上で適正な運用を図る。