国家機密と民主主義
外交にはあらゆる情報収集と蓄積が必要!
外交においては、各国について、日本との相互関係の歴史並びに現在の状況、民生、文化、技術、産業経済・政治システム・軍事などの現況と総合戦略、それらを支える人的情報、また、キーパーソンや関係構築のパイプとなる人物など、あらゆる情報収集と蓄積が必要である。
それらを可能にするため、総理府に情報庁を創設し、外務省スタッフはもとより、民間や文化・産業・国防などの各省から適材を求め、各国大使館に情報収集及び分析のためのスタッフを増強する必要がある。
それによって得られた情報(各国の歴史や現況、ニーズ、現在の立ち位置、日本に対しどのような関係を望んでいるのか)を基に、わが国が各国とどのような関係を構築すべきかを判断し、良好な関係を築かなければならない。
民主政治を標榜する限り、国の方針決定には国民の関与が必要!
日本が国際社会の中で信頼を得るためには、収集した情報をすべてオープンにするわけにはいかない。外国の政府又は国際機関から30年を超えて秘密指定を行うことを条件に提供された情報や相手国の特殊事情は当然に秘匿されなければならない。
対外秘密交渉など日本政府が関わり、公開することで相手国に迷惑や損失を与える情報に関しては、公開まで一定期間の猶予が必要となる場合がある。しかし、いかなる対外関係においても、日本政府が関わりもつ情報については、公開までの猶予期間を設けることはできても、いずれは全て公開されなければならない。
また、国家安全保障上の重要情報や防衛機密、技術情報などについては、内容が陳腐化するまでの期間は公開するわけにはいかない。スパイ活動や安全保障上禁輸指定されている製品や技術の輸出入、情報の漏えい、情報の不当取得など、さらには、国家や国民に対し破壊や殺傷その他の脅威となる犯罪者又は犯罪集団についての捜査で、公開捜査に踏み切れない場合など、内容の陳腐化や事態収拾までの期間、特定秘密情報として取り扱わなければならない場合がある。
民主政治を標榜する限り、『国家の行為を国民が監視することができ、情報にアクセスすることができるようになれば、公務員の職権乱用を防ぐだけでなく、人々が国の方針決定に関与できるようになる。つまり情報へのアクセスは、真の国家安全保障、民主的運営、健全な政策決定の極めて重要な構成要素である。そして、人権の行使が完全に保障されるためには、ある一定の状況下では、正当な国家安全保障上の利益を守るために情報を秘密にすることが必要な場合があり得る。(ツワネ原則より)』
法制化を進める政府と国民の双方が『この大原則』をしっかりと理解しなければならない。
日本国憲法には、民主主義を担保するための仕組みがない!
日本国憲法は、基本的人権を保障してはいるものの、国家運営においては、担い手である内閣総理大臣は間接選挙で選ばれ、政策決定は多数決の原理を拠りどころとしている。そのために、普遍的な価値観に基づく少数意見を反映するための「民主主義を担保するための仕組み」が組み込まれていない。
また、国民が直接選ぶ国会議員選挙でも、国民の意思として投じられる一票に格差があり、選挙制度そのものも、ヘマをしなければ政権党に有利な小選挙区制を中心としたものとなっているため、国民の意思が政治に正しく反映されるとは限らない。
政治においては、国権の最高機関とされる国会から政権を担う内閣総理大臣が選出され、内閣総理大臣を輩出した政党は政権与党として自動的に政権擁護に回ってしまうため、国会のチェック機能は完全に失われ、政権が暴走をし始めても国民には止める手立てがない。衆参の捻じれでもなければ野党の力は何の役にも立たない。 これは司法にあっても同様であり、捜査機関が法の本来の趣旨に反する権限行使を行おうとした時、刑事訴訟法上それを抑制する多くの手段が定められているが、刑事訴訟法は、職務上の秘密については監督官庁の承認がなければ尋問すらできず、良識ある裁判官を以ってしてもその壁を超えることはできない。しかも、悲しいことに政権が暴走をし始めると良識は影を潜め、司法も政権に追随してきた歴史がある。
特定秘密の指定には、独立第三者機関による当・不当のチェックが必要!
先ずは、三権分立の行政機関、国会、裁判所、これらの全てに文書主義を徹底させなければならない。当然そうあるはずと信じられていたものが、福島第一原発事故に対する内閣の指示命令関係記録が欠落していることで、その不徹底ぶりが明らかになった。これはほんの一例で氷山の一角でしかあるまい。緊急時の安全保障・危機対応・災害対策、更には、対外秘密交渉や内閣官房費の使途など、あらゆるものを文書化し保管しなければならない。
特定秘密の指定をした情報は、全て文書化し特定秘密の表示をした後、「一定期日」以内に第三者機関が管理する公文書館(新たに設置)に提供しなければ、秘密指定の効力を持たないものとし、第三者機関である監視委員会がその内容を精査できるようにする。
監視委員会による指定不当の判定があった場合、監視委員会は解除命令を出すことができ、その後「一定期日」以内に秘密指定を解除がなければ、監視委員会は命令内容を公示した上で関係者を告発できるものとする。また、政府の違法行為や恣意的な秘密指定を防止するため、内部告発受容機関としての権限を付与する。
この場合の監視委員は、新たに新設される監視員資格を持つ者の中から、各地方において国民の直接選挙で選出された者が国民を代表して務めることとする。
情報の漏えいに関する法的措置に加え、政府の恣意的な秘密指定は、一定の罰則を伴うものとし、対象者を指定者、情報閲覧資格者および監視委員とする。
特定秘密情報は、一定期間後の公開原則が必要!
外国の政府又は国際機関から30年を超えて秘密指定を行うことを条件に提供された情報や相手国の特殊事情についての情報を除き、全ての情報は公開されなければならない。特定秘密の指定は最長30年の指定制限を設け、期間満了時に第三者機関である監視委員会によって公開される。