安全保障(国家主権の保全)
中国資本が日本の水資源を狙って広大な森林地域の土地を買いあさっているということは、以前から多数のジャーナリストが警鐘していた。
世界的水不足が生み出す「水ビジネス」の広がり
日本の「水源林」が狙われている(水不足に乗じて外資が食指)
全国各地で、山林などの森林資源、水資源を外国人や外国企業が買いあさる状況が確認され、既に15の自治体から国に対し、何らかの規制を求める意見書が出されている。現在の日本は先進国の中では唯一、外国人や外国企業の土地の所有権取得に対し何の制限もない珍しい国である。
戦前は、大正15年に施行された外国人土地法があり、政令で国防上重要な保護区域を定め、外国人が土地を取得する場合、陸相や海相の許可を必要としていた。こうした保護区域は22都道府県に上っていた。
しかし、終戦に伴いすべての政令が廃止されたため、法律の実効性が失われてはいるが、現行法として存在している。政令等の定めがあれば立派に機能する法律である。
しかし、外国人土地法は、帝国⇒日本国、臣民⇒国民、と読み替えたり、相手国に制限があるなら同様の制限をつけるといったもので、外国人同士の転売など、グローバル化に対応したものではなく、その趣旨だけを汲んで全面的に改定する必要がある。
北海道では、以下の条例を制定した。しかし、罰則を設けているわけではなく、実効性はないように思える。
- 「水資源保全地域に指定された土地を売買する場合、所有者が契約の3カ月前までに売却先の氏名や住所、利用目的などを知事に届け出なければならない。」
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想、二国間自由貿易協定 (FTA)や二国間経済連携協定 (EPA)など、物品の貿易、サービス(越境サービス、一時入国、金融、電気通信)、電子商取引、政府調達、知的財産権、投資、環境、労働を含む幅広い分野を対象とする包括的な協定は、それらへの加入によって国家間の線引きが取り払われ、加盟国は大幅な規制緩和が求められる。
今後現在以上に世界経済のグローバル化が進めば、外国人や外国資本による土地所有権の取得問題は歯止めの効かないものとなろう。
土地には地上権だけでなく、水・温泉・鉱物などの地下天然資源や地下にある全てのものが含まれる。土地は即ち国土であり、国及び全ての国民のために有効に利用されなくてはならない。そのためには所有権の形態、権利の範囲、行為の制限等について厳密に規定されなければならない。平成13年4月1日より大深度地下の公共利用が可能となった。水・温泉・鉱物などの地下天然資源の公共利用を考えれば、土地所有者の権利の及ぶ範囲を制限することも検討されるべきであろう。
山林、原野、農地、湖沼、河川など国土環境保全のために重要な土地、発送電、ガス供給、石油備蓄・販売などエネルギー供給関連、空港、港湾、道路、鉄道、上下水道、情報送受信網などの基幹インフラ、これら国家安全保障上重要、かつ国民生活に大きな影響をもたらすおそれのあるものについては、当然に外国人及び外国資本による所有権取得の制限をすべきである。
外国人及び外国資本による企業買収や土地の取得についての制限
今後、TPPなどの経済連携協定ができると、国家安全保障上重要、かつ国民生活に大きな影響をもたらすおそれのあるものについて、企業買収や土地の取得などの問題は頻繁に起こる可能性がある。ISDS条項などで海外企業による提訴などがあった場合、条約等に縛られず国家主権を発動できるための法整備が必要である。
アメリカ合衆国の包括通商法に盛り込まれているエクソンフロリオ条項を参考に、以下のような法規制を設け、全ての経済連携条約等にも反映されるものとするべきである。その意味では、憲法の国家安全保障の考え方の中に、国家は相互に国家主権の行使を妨げることができない旨の条項を設けるべきである。
- 【国家主権の保全条項】
- 航空、通信、海運、エネルギー供給、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9分野において、国の安全保障を脅かし、国民生活に大きな影響をもたらすおそれのある外国資本による企業買収や土地の取得について、国内法の条項に触れると判断した場合、政府は阻止する権限を有する。
- 条約等の締結にあたり、互いに相手国の国家主権の行使を妨げてはならず、安全保障、社会保障、国土・環境保全のために必要な制度変更等は国家主権行使の範囲とし、一度決めた開放水準は逆戻り出来ないとするなどの制限を設けてはならない。(ラチェット条項の禁止)
- 【外国人土地利用法】
- 国土環境保全及び国家安全保障上、外国人又は外国人の持ち株比率が三十%を超える法人による土地の所有権の取得並びに賃借権その他の権利の設定にあっては、事前届出制とし、宅地を除く土地については、所有権の取得及び賃借権その他の権利の設定をすることができない。
- 外国人又は外国人の持ち株比率が三十%を超える法人による企業買収により、土地の所有権並びに賃借権その他の権利を取得する場合にあっても、前項の規定を準用する。
- 前各項の場合、日本人・日本法人による土地の権利の享有を制限している国に属する外国人・外国法人に対しては、日本における宅地の権利の享有についても、その外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同様の制限を政令によってかけることができる。
- ※【エクソンフロリオ条項】
- アメリカ合衆国大統領は、航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9分野でアメリカ合衆国の安全保障を脅かす外国企業によるアメリカ企業の買収や土地の取得について、対米外国投資委員会(CFIUS)が条項に触れると判断した場合、阻止する権限を有する。